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1兆円兼業グローバル個人投資家への軌跡

講義メモ:Topic 4.3 期待貨幣価値(EMV)基準

前回の「マキシミン基準(最悪に備える)」が守備の戦略だとすれば、今回の**「EMV基準」**は、投資家がポートフォリオの収益を最大化しようとする際の「攻めとバランス」の統計的な根拠となります。

 

EMVの計算だけでなく、その**「限界」**を理解することは、他者が数字の平均値に惑わされている中で「非連続な価値」を見抜くための必須教養です。


講義メモ:Topic 4.3 期待貨幣価値(EMV)基準

EMV(Expected Monetary Value)は、不確実な状況下で「平均的に最も得をする選択」を導き出すための基準です。

1. EMVの定義と計算

  • 定義: すべての起こり得る結果(アウトカム)に、それぞれの発生確率を掛け合わせた「重み付き平均」。

  • 公式:

    $$EMV = \sum (結果 \times 確率)$$
  • 意思決定ルール: 複数の選択肢の中から、EMVが最大となるものを選ぶ。

2. 感度分析(Sensitivity Analysis)

確率の推定値が少し変わっただけで、ベストな選択肢が入れ替わってしまうことがあります。

  • 損益分岐確率(Break-even Probability): 選択肢AとBのEMVが等しくなる確率の境界点。

  • 実務での活用: 「需要が20%以上あると確信できるならA、そうでないならB」というように、判断の「デッドライン」を明確にできます。

3. EMV基準の4つの限界(重要!)

ここが、単なる実務家と「一流の投資家」を分けるポイントです。

限界項目    
反復性への依存 期待値は「何度も繰り返す」ことで平均に収束する。一生に一度の決断には不向き。 キャリアの転換点は「一回きり」の勝負。平均値だけで決めて良いか?
リスク態度の無視 期待値が同じなら、100%の100万円と、1%の1億円を同等に扱う。 バフェットが重視する「破滅リスクの回避」をEMVは考慮できない。
貨幣の線形性 0円から100万円増える価値と、900万円から1000万円増える価値を同じとする。 生活基盤がある状態での増収と、基盤を失うリスクは等価ではない。
単一属性(金銭) お金(貨幣価値)のみに焦点を当て、それ以外の目的を無視する。 ミュンヘンでの生活」「仕事の希少性」といった非金銭的価値が消える。

【キャリア戦略への示唆:EMVを『超える』意思決定】

シュンペーターが定義した「非連続性」やドラッカーの「価値次元の転換」をキャリア設計に持ち込む際、EMVをどう活用すべきかまとめました。

① 「期待値」を算出し、その後に「リスク態度」を乗せる

ミュンヘンでの新キャリア」のEMVを計算したとき、もし帰任のEMV(確実な給与)より低くなったとしても、即座に諦める必要はありません。

  • なぜなら、EMVには**「希少性(Scarcity)」や「自己実現」という非貨幣的価値が含まれていない**からです。

  • 投資家バフェットも、単なる数字の期待値だけでなく、その企業の「堀(Moat = 希少性)」を重視します。ミュンヘンに残ることで得られる「現地の政財界ネットワーク」や「欧州ガバナンス実務」というMoatを、EMVにどう加味するかが鍵です。

② 感度分析で「覚悟の境界線」を知る

先ほどの食品メーカーの例(境界線が20%)のように、自分なりの境界線を引いてみましょう。

  • ミュンヘンで理想の仕事が見つかる確率が何%以上なら、帰任の内示を辞退するリスクを取るか?」

  • この数値を算出しておくことで、5月の期限が近づいた際に、感情に流されず「今はまだGOだ」「ここからは撤退(Plan B)だ」と冷静に判断できます。

③ 非連続性のマネジメント

人生プランは「平均的なエリートサラリーマン」からの非連続な脱出を目指しています。

  • 問い: 帰任キャリアは「連続的(Linear)」な積み上げですが、ミュンヘンでの挑戦は「次元の転換」になり得ますか?