とにかく早くキャッシュが欲しいソフトバンクグループ

ソフトバンクグループの子会社であるソフトバンクの目論見書に目を通した

経営戦略(定性面)に対する理解が及んでいないだけかもしれないが、正直なところ財務諸表(定量面)から見ると、今回のソフトバンクIPOは、ソフトバンクグループのFinancing(資金調達)が目的にしか解釈できない(というように読み取れる)

年間5千億円のFCFを生み出す子会社を上場させるということは、(将来ではなく)今キャッシュが欲しいということを物語っている
売り出しで2.6兆円調達と報道されているが、この上場で実質的には4.2兆円のキャッシュを手に入れたのではないか

目論見書を見ると、

  • 「2018年8月23日付で金銭消費貸借契約を締結し、2018年8月31日付で1,600,000百万円の借入を実行」とあり、
  • 更にソフトバンクグループがソフトバンクからキャッシュを吸い上げるために、ソフトバンクの資本剰余金を原資とした配当をさせて、ソフトバンクの純資産を1兆3,708億円(2017年3月期)から6,573億円(2018年3月期)に減少させている

つまり、子会社からキャッシュを吸い取って、親会社が子会社に貸し付けている

毎年5千億円のFCFを生み出すので、返済には問題はないと思うが、上場させる前に今取れるだけのキャッシュを吸い尽くしたと財務諸表は読み取れる

ソフトバンクグループはこの冬にでも、また大型出資又は大型買収をする予定で喫緊にキャッシュが必要なのだと推測される

また、配当性向85%ということは、上場後もソフトバンクは親会社であるソフトバンクグループに引き続きキャッシュ貢献するということ

ソフトバンク
<2018年3月連結実績>
売上高:3兆5,470億円
営業利益:6,419億円
営業利益率:18.1%
純利益:4,111億円
調整後EBITDA:1兆1,422億円
FCF:948億円
調整後FCF:5,105億円

純資産:6,573億円

2.6兆円の売り出しという供給量が大きすぎるので、株価形成にあたり需要が十分か心配だが、ブックビルディングの結果を見て、初値の感触を掴みたい
ソフトバンクグループは個人投資家に人気なので、ソフトバンクも同様の傾向になると推測され、投資家がキャッシュを手元に用意するために、保有銘柄を11月中に売り出す動きが出てくると思われる

今回の上場について解釈は色々あると思うので、専門家の見解も聞いてみたい